2012年御翼1月号その2

クリスタル・カテドラルの破産

 米国・ロサンゼルスのクリスタル・カテドラル(ロバート・シューラー博士が創設、テレビ伝道番組 「アワー・オブ・パワー」は過去40年続いた長寿番組)が、カトリック教会に買い取られることとなっ た。大がかりなクリスマス降誕劇(グローリー・オブ・クリスマス)の費用が払えず、数百の業者から 告訴を起こされ、クリスタル・カテドラルは昨年から会社更生法を適用、今年の11月までに負債額約40 億円を支払わなければ、破産宣告を受けることとなっていた。
 クリスタル・カテドラル(CC教会)は、1955年にロバート・シューラー博士が開拓伝道して始まった が、過去10年、赤字が増え続けていた。直接の原因は、内部抗争(誰がシューラーの後継者になるか、 シューラー2世とその兄弟間の紛争)である。2008年、当時主任牧師だったシューラー2世(長男)が、 礼拝番組を降板させられた。シューラー博士が息子の2世を解雇したとの報道もあったが、彼は兄弟( 姉、妹、そして義理の兄弟)らに解雇されたのだという。その理由は、シューラー2世の説教は不十分 (「油そそぎがない」―神によって聖別されていない)だというものであった。しかし、2世の娘によ ると、CC教会を存続させるため、2世がスタッフをしている兄弟らの給与をカットしようとしたので、 解雇されたのだった。その後、シューラー博士の長女が主任牧師となっていたが、収支は改善すること はなかった。長年CC教会でピアニストを務めたロジャー・ウィリアム氏によると、シューラー博士が能 力的に不適な娘や義理の息子たちを、重要なポストにつかせたのが災いしたのだという。
 米国メガチャーチの元祖、クリスタル・カテドラルの破産は、米国社会全体の変化や問題点の現れと も取れる。まずは、CC教会が位置する南カリフォルニアは、もはや白人社会ではなく、ヒスパニック( メキシコからの移民と子孫)系が多数派である。CC教会でも、午後行われているヒスパニックの礼拝に は、列ができて中に入れないほど、信者で溢れている。しかし、白人中心のCC教会を支えるほどの力は 彼らにはない。また、世界的な恐慌が訪れているのも事実である。更に、表向きは民主主義であっても 、軍国主義が蔓延し、資本主義の名のもとに世界を植民地化しようとしてきた米国も、かつての英国や スペインのように、「霊的な傲慢」に陥っているとも言えそうである。そこには、神に祝された国とし て、福音を世界に告げる使命を担いながら、この世的な「不義」に染まった感もある。
 それならば、どこに救いがあるのか。CC教会を追われたシューラー2世は、米国のクリスチャンメデ ィアを買収、衛星放送やネットを使った伝道・宣教をするメディアの最高経営者となっている。今後、 教会の成長の仕方は、必ずしも巨大な建物を持つメガチャーチを中心とするのではなく、インターネッ トなどを使って空間を超えて成長して行くであろうと、リック・ウォレン牧師は言う。もちろん、各個 人が血の通った教会に通うことは、霊的な成長のために欠かせない。しかし、コストのかかる建物や、 地上波のテレビが中心ではなく、時代に合った宣教の仕方をシューラー2世は実現できたことになる。 何よりも、シューラー3世が牧師となっており、CC教会とは別に、自ら開拓伝道している。CC教会も、 今後カトリックの大聖堂となることで、キリストの福音を宣べ伝えて行くことには変わりない。人間側 には「不義」があっても、神の国を宣べ伝える善い業は、続けられるのだ。そして、シューラー2世が 礼拝番組を降板させられた頃、日本CGNTVが韓国の牧師によって開局した。キリスト教の活動が、これ までの米国にも劣らぬ勢いでアジアでも始まっている。

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